急性腰痛症(ぎっくり腰)とは

急性腰痛症、通称ぎっくり腰は、日常生活で最も一般的な腰痛症の一つです。発症の瞬間がある程度はっきりしている場合が多く、何かを持った瞬間や体を屈めた瞬間に発症することがよくあります。欧米圏では「魔女の一撃」と表現され、瞬間的に強い腰痛が出ることをよく表しています。

急性腰痛症は非常に強い痛みがあり、腰を曲げ伸ばしすることが困難で、座った姿勢から立ち上がることや歩行にも大きな障害が生じます。通常、症状が長期間続くことはまれで、数日から2週間程度で自然に軽快することが多いです。

急性腰痛症(ぎっくり腰)の原因

急性腰痛症には、大きく分けて2つの原因があります。ひとつは筋肉に由来するもの、もうひとつは脊椎の椎間関節に由来するものです。前者を筋筋膜性腰痛症(MPS)、後者を椎間関節性腰痛と呼びます。

 

MPSは、腰背部の筋肉が急激に収縮したり、筋と筋膜が癒着を起こすことで腰痛を引き起こします。脊柱起立筋(とくに多裂筋)と腰方形筋で起こるケースが多いです。

 

椎間関節は、上下の脊椎をつなぐ関節で、左右32対存在しています。脊髄神経から後枝内側枝と呼ばれる細い神経が椎間関節周囲に伸びており、椎間関節周囲の炎症が波及したり物理的に障害されることで疼痛を引き起こします。

 

いずれの腰痛も、レントゲン撮影では確認できないため、症状や理学所見から治療を行うことで断定していきます。

急性腰痛症(ぎっくり腰)の治療

ぎっくり腰の治療は、薬物療法、リハビリテーション、ブロック療法に大きく分かれます。

  • 薬物療法: 消炎鎮痛剤や筋弛緩薬、筋緊張を和らげる漢方薬などが使用されます。アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛薬が使用されることが一般的です。症状が自然に軽快するまで、少しでも楽に過ごすために処方されます。ただし、腎機能や肝機能障害がある場合は使用できない場合があります。
  • リハビリテーション: 体幹部の筋緊張を和らげるため、ストレッチや腰部にコルセットを使用して局所的な安静を取ります。
  • MPSに対して有効なブロック療法: トリガーポイント注射があります。トリガーポイント注射は、医師が患部を触診し筋硬結を触れたところ(トリガーポイント)に注射を行う方法です。通常、トリガーポイントには圧痛を伴うことが多く、症状のある部位と一致しています。筋肉と筋膜の間に針の先端を位置させ、薬液を注入します。
  • 椎間関節性腰痛に対して有効なブロック療法: 椎間関節ブロックがあります。トリガーポイント注射よりも深部にまで針を刺入し、椎間関節内に局所麻酔薬を注入して鎮痛を行います。左右同時に行ったり、複数の椎体レベルで行うこともあります。

 

疼痛が強い場合や症状が改善しない場合は、病院を受診することをお勧めします。また、ぎっくり腰を予防するためには、適度な運動や姿勢改善などが重要です。

 

総じて言えることは、急性腰痛症は急性の腰痛であり、適切な治療を受けることで、多くの場合は自然治癒するということです。しかし、重度の痛みや症状が続く場合は、早期の適切な治療が必要です。また、予防にも運動や姿勢改善が必要であるため、普段から注意することが大切です。