硬膜外ブロック注射とは

硬膜外ブロック注射は、痛みを和らげる治療の一つです。背中から針を刺し、局所麻酔薬やステロイド薬を痛みがある場所に注入し、神経レベルで痛みをブロックするため、強力な鎮痛効果をもたらします。

頸・胸部硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロック、仙骨部硬膜外ブロックの3つに分類されます。

痛みの緩和に薬物療法やリハビリテーションが効果がない場合や、痛みが強く生活に影響がある場合に適用されます。

硬膜外ブロックの方法

患者様は、ベッド上で横向きあるいはうつ伏せになり、針を通すために背中を丸めた体勢を取ります。

針はある程度の太さがあるため、まずは皮膚表面を局所麻酔することから始めます。医師や看護師が優しく声をかけながら注射をしていきます。実際に使用する局所麻酔の針は非常に細く、チクリとは痛みますが激痛であることは稀です。

治療中は、ほとんど痛みを感じることはなく、少し背中が押される感じがする程度です。手技は数十秒から数分以内に終了します。

硬膜外ブロックの合併症

硬膜外ブロックには、いくつかの注意すべき合併症があります。以下に紹介します。

軽微な合併症

  • ブロック針を刺した箇所からの軽い出血
  • 皮下出血、あざ
  • 交感神経ブロックによる血圧低下
  • 消毒薬に対するアレルギー(皮膚の発赤)
  • 一時的な運動神経麻痺

重篤な合併症

  • 局所麻酔中毒(1万例に1.2〜11例程度)
  • クモ膜下ブロック(1%以下)
  • 硬膜誤穿刺
  • 硬膜穿刺後頭痛
  • 神経障害(0.06%)
  • 硬膜外血腫(0.01%以下)
  • 硬膜外膿瘍(0.01%以下)

 

当院では、硬膜外ブロック後には、重篤な合併症を早期に発見するため30分ほど処置室のベッドでお休みいただいております。ご自宅に帰られて何か異常を感じた際には、当院までご連絡をお願いいたします。

硬膜外ブロックQ&A

Q:硬膜外ブロックはその場しのぎの痛み止めなんじゃないの?

A:半分正解で、半分不正解です。確かに硬膜外ブロックは急性期の鎮痛をするのに用いられているので、とにかく痛みを取りたいときのために用いられる鎮痛法です。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では神経周囲に「発痛物質」が貯まるとされます。ブロックで用いる局所麻酔薬により発痛物質が洗い流されることで、新たな痛みを生じにくくする効果があります(ウォッシュアウト効果)。慢性腰痛では交感神経の活動が高まっており、痛みがさらに生じやすい状態になっています。硬膜外ブロックは交感神経を同時にブロックするため、副交感神経が優位となり痛みが生じにくい環境を整えます。

Q:ブロックはくせになるって聞きましたよ。

A:ブロックには精神的依存も肉体的依存もありません。一度打ち始めるとずっと打っていかなければならないということもありません。単発のブロックで治療が終了することは稀ですが、複数回繰り返す場合でもブロックを続けていくと徐々に痛みの強さや頻度は減少していくことが多いです。痛み自体が弱まっていれば、ブロックを行う頻度自体を減らしていくことができます。実際に当院では、ある程度ブロックを継続したところでほとんどの患者様が治療を卒業しています。ブロックへの反応が悪い痛みであった場合には、ブロックを無理に継続することはせず、別の治療方法をご紹介しています。

Q:何回打てば治るの?

A:ブロックの継続期間は患者様によってまちまちですので、症状次第と考えます。当院でブロックを行う場合、通常は3〜5回程度継続して行い、症状をみながらそのまま継続するかどうか再検討しています。経験からは、約半数の方が3〜5回でブロックを卒業しています。長期でブロックの継続が必要になっている場合や、ブロックへの反応が悪い場合は他の治療法をご紹介しています。

Q:血液サラサラの薬を飲んでるけど、硬膜外ブロックはできる?

A:申し訳ありませんが、抗血小板薬、抗凝固薬を服用されている方へは、硬膜外血腫予防目的に硬膜外ブロックの提供は致しかねます。